
著者の言葉
日本ではあまり馴染みのない教育人類学や言語人類学という立場から、アメリカで学ぶ「日本人」高校生を対象としたフィールド調査をまとめた博士論文をベースに編み直したものです。教室の中、学校の中、個の時間的な変容や移動による変容など、一見「日本人」という社会的カテゴリーに入るとみなされる生徒らによる生き生きしたやりとりや葛藤を、多角的に、詳細に、時空間と多様な声の変化に目を向けて描くことで、国際移動をする子ども達のアイデンティティや居場所に関して考える際の視点を提供しています。近年、日本の教育の場においても外国人児童生徒に関する話題があがりますが、かれらの「学習」に関する議論と共に、「社会関係」という視点についても考えるきっかけに、本書がなればと思います。
(国際学術研究院准教授・小林聡子)