高畑勲をよむ : 文学とアニメーションの過去・現在・未来

投稿日:2021/02/10

高畑勲をよむ : 文学とアニメーションの過去・現在・未来

著者:中丸禎子, 加藤敦子, 田中琢三, 兼岡理恵, 佐藤宗子ほか

出版社:三弥井書店

出版年:2020年

編者より

「図々しいですけど、一言で言ったら、子どものことなんて考えていないです」-「自分が作ったアニメーションは、子どもにとってどんな存在であって欲しいか」という質問に対する、アニメ映画監督・高畑勲氏の答えです。「火垂るの墓」「かぐや姫の物語」などの作品で知られる高畑氏に対し、私は2015年、シンポジウム「高畑勲の≪世界≫と≪日本≫」においてインタビューする機会に恵まれました。その中で私が一番衝撃を受けたのが、冒頭のひとことです。そして氏の発言は次のように続きます。「僕だけじゃないでしょうけど、とにかく、みんな作りたいものを作っているんですよ」。きわめてシンプルな考え方。しかし「好きなことを好きなようにやる」ことが何かと困難な世の中、何よりビジネスとして成功(=ヒット)を求められる商業作品において、このように言い切れる高畑氏の強さ・絶対的な信念を感じた瞬間でした。
 本書は、この高畑氏インタビュー、同氏とアニメ制作を担った小田部羊一氏・中島順三氏の座談会(※小田部氏:アニメーター。「アルプスの少女ハイジ」等キャラクターデザイン。中島氏:「ハイジ」等、TVアニメ作品のプロデューサー)、そして高畑氏がその作品を通して表現したもの、作品の背後にある文化・思想を、文学・メディア論等、さまざまな分野の研究者が論じた12本の論考から成る「高畑文化論集」です。
 高畑ファンはもちろん、アニメを見たこともない方(むしろそうした方にこそ!)に本書を手に取っていただき、高畑勲を「よむ」ことで見えてくる文学・映画、それらを取り巻くメディア環境について、さらに読了後、改めて高畑作品を「みる」ことで、様々なことを感じていただければ幸いです。

(人文科学研究院准教授・兼岡理恵)

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