富士山宝永噴火史料集

投稿日:2024/03/05

富士山宝永噴火史料集

著者:津久井雅志, 安藤広太, 金子徹

出版年:2024年

著者の言葉

富士山宝永噴火は宝永四年十一月二十三日(1707年12月16日)午前に南東山腹で噴火が始まり,十二月九日(1708年1月1日)未明まで断続しました.白色の軽石,黒色のスコリア,火山砂が静岡県東部,神奈川県に数十㎝から3mの厚さで積りました.当時の江戸市中にも,昼間でも行燈ともすほど暗くなり,砂・灰が降りました.スコリア,火山砂が厚く堆積した地域,これらが二次的に移動して主に酒匂(さかわ)川(がわ)水系で氾濫した地域の住民は数十年にわたり生活が立ち行かなくなりました.
今後,富士山が噴火し,軽石,スコリア,火山砂等の火砕物を放出すような噴火様式となった場合,過去の実績例として,宝永噴火の実態を正しく知っておくことは重要です.
すでに数多くの優れた研究成果が発表されているのですが,今回,この史料集では,改めて史料原典を検討しました.史料を整理して,宝永噴火の推移を高い時間的・空間的分解能で明らかにするとともに,日々の降砂分布を図示しました.静岡県東部-神奈川県中部-千葉県中部に降砂分布軸を持つ時間帯,東京都北部-埼玉県東部-茨城県南部に分布軸を持った時間帯があることなど刻々と変わる降灰域を示すこともできました.村々名主から代官,領主にあてて,噴火の被害状況,砂除け作業量と費用見積,復興事業進行状況確認のために報告した降砂堆積層厚の一次データもあわせてとりまとめました.
この成果を,噴火現象のさらに詳しい解明や,防災対策の基礎資料として活用していただければ幸いです.

(大学院理学研究院 教授・津久井雅志)

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