編者の言葉
人は、皆、公正な社会に生きることを望んでいます。しかし、その公正の意味は、時代とともに変化してきました。本書は、この問題を、近代日本の歴史に焦点を当て、地域と国家という視点から分析したものです。 日本の近代とは、明治維新を機に、市民は誰もが自由を享受し、平等な権利を有するという、西洋起源の市民社会の理念が受容されるようになった時代を指します。この市民社会の理念は、地域と国家との間に大きな社会変化をもたらしました。そもそも自由と平等とは、多様な解釈が可能な概念です。そのため、地域社会の中で人々は、市民として自由と平等を都合よく解釈し、自己の利益を追求し、国家もまた、市民社会の理念を国の都合に合わせて解釈し、地域社会を統治するため利用しようとしました。その結果、地域社会と国家との間では、さまざまな利害の対立が生じたものの、他方で、両者が同じ価値観を共有すると、その実現を目指して協力するといった動きも生まれるようになりました。 本書は、こうした社会変化に注目し、政治学、社会学、経済学といった専門の異なる11名の研究者が、明治期から戦後の高度成長期にかけて生じたさまざまな事例を分析したものです。もっとも、本書は、多くの研究成果をただ寄せ集めたものではありません。むしろ本書の狙いは、それらを俯瞰することで、人々が何を公正と捉え、その実現を目指してきたのかといった公正の遍歴の過程に一つの筋書きを与える点にあります。そこで描き出そうとしたストーリーがどのようなものか、そしてその試みが成功しているかどうか、是非、本書を手に取って確かめていただければと思います。 (社会科学研究院教授・荻山正浩)
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基礎から学ぶ教育行政学・教育制度論
著者:阿内春生, 植竹丘, 櫻井直輝, 小早川倫美, 白川優治, 小野まどか, 太田知実, 澤里翼, 木村康彦, 武井哲郎, 江口和美, 高橋望, 栗原真孝, 米岡裕美, 植田啓嗣
出版社:昭和堂
出版年:2024年
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