著者の言葉
渡島(おしま)大島(おおしま)は,北海道渡島半島の西海岸の50km あまり西方にある活火山で,東西約4㎞,南北約3.5㎞,標高732m(海底からの比高約2300m),玄武岩~安山岩質(SiO2 47.8~61.7 wt.%)の成層火山である。火山活動は大きくわけて東山外輪山,西山外輪山,中央火口丘の3つの活動期が認められ,東山外輪山,西山外輪山には溶岩流や火砕物からなる円錐状の火山体が存在したと考えられている。
寛保元年(1741年)には噴火開始一週間後に大津波が発生し,対岸の北海道西岸を波高10mに達する津波が襲うなど,日本海沿岸地域に大きな被害を及ぼした。松前藩から幕府へ報告した犠牲者数は1,467人であるが,すべて壊滅した集落が多数あること,アイヌや一時滞在者,弘前藩(津軽藩)の犠牲者の多くはこの報告から漏れていることから,この数字はかなり過少な見積りである。本史料集では,寛保元年噴火・津波とそれ以降寛政年間までの火山活動とその推移を復元することに重点をおいて,従来知られていた史料に加え,新たに降灰,灰交りの降雪,硫黄臭に関する記録を収録した。
この史料集を作成するにあたり,できる限り一次史料にさかのぼり,原文を確認した上で,活動全体を理解するよう心がけた。また,内容の検証のため原史料の所蔵・管理者と翻刻文の出版情報を明示するとともに,史料の背景や成立過程がわかるよう解題をつけた。渡島大島の噴火と関連する現象をより深く理解するため,また,防災・減災のための基礎資料としてこの史料集が役立つことがあれば幸いである。
(理学研究院教授・津久井雅志)
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