著者の言葉
樽前山は北海道の支笏湖の南東,支笏カルデラ縁上で約9,000年前に活動を開始した火山で,火砕丘および火砕流堆積物で構成されている。山頂部には直径南北 1.2㎞,東西 1.5㎞の大型の火口(山頂火口原)があり,中央火口丘と呼ばれる低い火砕丘が覆っている。中央火口丘の中央には明治四十二年(1909年)に生じた高さ約120mの溶岩ドームが存在する。有史時代の噴火はすべて山頂で起こっており,現在も噴気・地熱が認められる。
この史料集では,樽前山の有史時代の噴火のうち本格的な地質調査・機器観測が行われる前の,寛文七年(1667年)噴火,元文四年(1739年)噴火,明治七年(1874年)噴火,明治十六年(1883年)噴火を対象とした。噴火や地震,その他関連する現象を記したと思われる文書・絵図等の一次史料を収集し,翻刻と整理を行ない,火山活動と社会の対応全体を理解するよう心がけた。
今回検討した4噴火は,樽前山の周辺の人間活動の時代的な変化を反映して観察記録の残され方が大きく異なる。寛文七年(1667年)噴火,元文四年(1739年)噴火のころは樽前山近傍に記録者はおらず,みかけ噴出量が2㎦を超える大規模噴火を100㎞以上離れた地点から噴煙を観察し,地震・鳴響を記録するのが精一杯であった。それでも噴火の日時や継続期間を推定する上で非常に重要な情報を書き記している。
明治七年(1874年)・明治十六年(1883年)の2回の噴火は,樽前山の周辺にも多くの人が移り住んでいたことから,噴火の規模が寛文・元文の2回の噴火とくらべてはるかに小さかったにもかかわらず,直ちに北海道開拓使による調査が行われ,推移を記録した。その結果,小規模の噴火を理解し予測するうえで貴重な情報が得られた。
この史料集が樽前山の噴火と,関連する現象をより深く理解するため,また,防災・減災のための基礎資料として役立つことがあれば幸いである。
学部・研究科等
キーワード
新着記事
-
-
-
アメリカ文学における幸福の追求とその行方
著者:貴志雅之, 西谷拓哉, 西山けい子, 中良子, 新田玲子, 竹本憲昭, 古木圭子, 常山菜穂子, 黒田絵美子, 後藤篤, 原恵理子, 白川恵子, 堀内正規, 山本裕子, 森瑞樹, 中村善雄, 岡本太助, 渡邉克昭
出版社:金星堂
出版年:2018年
-
モダンの身体 : マシーン・アート・メディア
著者:中村嘉雄, 小笠原亜衣, 塚田幸光, 佐藤正則, 石原剛, 藤野功一, 古谷裕美, 鈴木章能, フェアバンクス香織, 本荘忠大, 山本裕子, 本村浩二, 柳沢秀郎, 福田安佐子
出版社:小鳥遊書房
出版年:2022年
-
-
-
-
アメリカ文学における「老い」の政治学
著者: 金澤哲, Mark Richardson, 石塚則子, 柏原和子, 里内克巳, 白川恵子, 塚田幸光, 松原陽子, 丸山美知代, 山本裕子
出版社:松籟社
出版年:2012年
-
-
神経発達症児童への包括的治療教育プログラムガイドブック(補)ギフティッド児支援 ; 第4版
著者:杉田克生、櫻井健一、中道圭人ほか
出版社:千葉大学子どものこころの発達教育研究センター
出版年:2023年