千葉大学附属図書館亥鼻分館所蔵の貴重書は,古医書コレクションとして5千5百余冊が貴重書室に収蔵されている。このコレクションは,医学部の歴史の中で蓄積されてきたもので,蔵書印の変遷から医学部の前身である第一高等学校医学部時代(1893-1901),千葉医学専門学校時代(1901-1923),千葉医科大学時代(1923-1949),千葉大学医学部時代(1949-現在)に至る長期間に渡り収集されてきたものであることがわかる。 本コレクションの収集の過程において中核となった事業は,本学眼科学教授伊東弥恵治教授により進められた大正末期から昭和20年代にかけての古医書の収集である。特に,太平洋戦時下においては,古医書の焼失・散逸を危惧しそれを防ごうとするために,また当時は外国図書の購入ができないことの事情もあり図書費のほとんどを古医書の購入に充てたとされている。伊東教授の専門の眼科学のみならず,医学史の研究に役立てる目的で医学全般の古医書を収集し,その数は4千余冊になる。 それに加えて,太平洋戦争直後に本県茂原市で代々眼科医を開業されていた「永吉の眼科」第6代目院長千葉彌治馬氏から同家伝来の古医書千余冊が寄贈された。「千葉本家文庫之印」の蔵書印によって知ることができるが,古医書コレクション目録では,旧蔵の項目に「茂原・千葉家本」と記している。 また,1950年(昭和25年)には,佐倉順天堂の佐藤恒二氏より佐倉順天堂蔵書4百余冊を譲り受けた。この中には貴重な洋書76冊が含まれている。この一群の古書には,書誌の旧蔵の項目に「順天堂蔵本」もしくは「順天堂佐藤本」と明記され目録上で識別できるようになっている。 さらに,1951年(昭和26)には,江戸末期の広島の医家三宅春齢の孫,三宅しづ氏より春齢の著書等19冊(目録旧蔵の項目に三宅シヅ氏と記載)が寄贈された。その後,薬学部所蔵の古医書を加え,5千5百冊を越える現在のコレクションが成立した。 古医書コレクションの主体は,江戸時代から明治時代初期に出版・書写された医書で,和方,漢方,蘭方,洋方など多岐に亘っている。医学以外では,天文,和算,文学,史書等の書籍も若干含まれる。 現在の古医書コレクションの全貌を窺い知ることのできる古医書コレクション目録(冊子体)(注)は,和漢書(翻訳書を含む)のみの書誌・解題から成っている。医学部の前身時代に購入された古洋書や先に記した佐倉順天堂の洋書などについては,書誌データが作成されていない。この中には,オランダ語の原典を見事な筆跡で書き写した筆写本もあり,往時の洋書に対する価値を改めて考えさせるものもある。今後,これらの洋書も書誌作成により,古医書コレクション目録Web版に入れその総体を示すことが必要とされる。今だ公開途上のコレクションである。
2007.12 亥鼻分館
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