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館長挨拶

館長挨拶

2005年9月20日

千葉大学附属図書館長
土屋 俊
Tutiya, Syun

千葉大学附属図書館は、千葉大学の機関リポジトリとしてのCURATORを構築しつつあります。 この構築は、厳密には最初も最後もない地道な仕事ですが、ともかくこの計画が端緒についたことを記念し、 あわせて、これからの方向性を議論するとともに、同様の構想をもつ他大学、他機関の方々からのフィードバックをいただく機会として、 このシンポジウムを開催することといたしましたが、以下では、その基本的な考え方について思うことを述べたいと存じます。

「機関リポジトリ」は、機関(大学)の研究成果・教育資源を電子的に保存し、 さまざまな人々の用に供することを目的としています。 研究成果のなかには、学外の学術雑誌に投稿し採択された論文、学内の紀要に発表された論文、 それらの基礎となるデータやそのデータベース、それ以外のさまざまな学術資料 (研究報告書、資料集、校訂、博物資料など)が含まれます。 教育資源としては、シラバス、授業資料(スライド、配布物、マルチメディア教材など)、 e-Learning用各種コンテンツが含まれます。 つまり、千葉大学が学術的な活動を行なって生み出したすべての資料で電子的なもの、 電子化されたものがすべて含まれるということになります。 千葉大学のショウウィンドウであり、ショウケースであるといってよいでしょう。 学術論文のなかでも他大学では購読していない雑誌に発表されたものは、CURATORから利用することができますし、 授業資料は高校生がより詳細に千葉大学への進学を検討する際に役立つことでしょう。

この意味で、CURATORという営為は、附属図書館の営為である以上に、大学そのもの、大学全体の営為であり、 すべての教員・学生が参加できるし、しなければなりません。 実際、千葉大学においては、平成16年度の教育研究評議会でCURATORを大学のプロジェクトとすることを議決して、 推進が附属図書館にまかされ、各学部、研究科、研究院の支援も受けて、 日本でも最初の組織された機関リポジトリが誕生しつつあるところです。

一方で、機関リポジトリを構築、維持するという仕事に大学図書館が取り組むということは、 電子化された学術的コミュニケーションの時代における大学図書館の役割、機能の変革を象徴するものです。 従来型の図書館は、大学の外に現われた資料を、学内の教育・研究からの需要に応じて選択、収集し、 利用に供するとともに保存・蓄積を図ることが主要な役割でした。 しかし、電子化の時代では、電子ジャーナルに象徴されるように、大学の外に現われる資料はインターネットと学内LANを経由して、 直接利用者の手許で利用可能となります。

図書館が選択、収集、提供、保存、蓄積する必要はなくなりました。 図書館のベクトルは方向を逆転することになりつつあります。 つまり、図書館が選択、収集、提供、保存、蓄積する資料は、大学の外に現われるものではなく、 大学の中における教育研究活動が生み出した知的資産にほかなりません。 この貴重な蓄積が将来の学術の糧となる環境を構築することが図書館の新しい、 電子化の時代にふさわしい役割だと言うことができます。

ここにいたるまでご苦労された皆さまに対して、あえて多くの方々の名前を挙げることはいたしませんが、 この場を借りてお礼申しあげたいと存じます。 あわせて、学内関係者のみなさまには、今後ともご協力をよろしくお願いいたします。 また、日本においては、このような企図はまだ広く実現されているとは言えませんが、大学間の協力活動があってはじめて 真に役に立つものとなるので、関係諸機関、各大学からのご支援もいただいていかなければなりません。 この意味で広く今後のご支援をお願いしたいと思います。